限(きれ)ない 闇を 擦(なす)りて 仄白い 雨が降る
濡つる 螟蛾(めいが)の 翅を 穏やかに 捥(も)ぎ落とす
もう 何も 視えぬ 瘧(わらわやみ)の中 深く深く 沈みたい
止まない雨を 集めて仄暗い 闇が 眩(く)る
時雨れることも 忘れた 眼鞘(まなざや)を 閉ざす為
もう 誰も知らぬ 黄泉國(よもつくに)の底
ずっと ずっと 焼かれたい
嗚呼 恋の歌を 嗚呼 彼に伝えて
嗚呼 遠き風に 愛おしき 声を聴く
♪
旅の 縁(よすが)に 戯(ざ)れて 誑した 女(おみな)
見目麗しく 艶事欠かぬ 色女(いろめ)
何時か 番うと 容易く 包め 枕(ま)いて
畢(おわ)るや否や 穴(けつ)を捲くりて 帰路へ
何処へ 失せた 愛しき 男(おのこ)
失われたのは 花
決して 違わぬ 貴方の 匂い
詐(いつわ)りの 業に 泣いて
此の儘(まま) 往(い)かないで 彼(あ)の日が堕ちてゆく
♪
頑に迫る 蛇心(じゃしん)の嬌笑(きょうしょう)抗い 鮸膠も無く
戯言(けごん)の契りを 片腹痛しと 足蹴にすれども 無駄
嗚呼 せめて 只 一言 「其方恋し」と 聞かせて
嘘でも偽りでも どうか其の傍に 居させて
噫 逢瀬 重ね重ね 恋うる 心 更に 燃え上がる(凍る 心 新に 冷めてゆく)
♪
立ち籠める 夏霞(なつがすみ) 憧れは 泡と消(き)ゆる
止めどなく 流れ 落つるは 悔いの泪 貴方を信じて
野辺に 咲く 花にさえ 憐れびを 向けように
人でなく 畜生の 道を 只 這いずれば
「恋いもせぬわ」と
余りと言えば 余りない言い種
♪
臠(にく)が爛れる 残酷の雨 蛇(くちなわ)の獄の中
生きて帰さぬ 骨も残さぬ 其の罪を 悔して死ね
今更 呼ばないで もう直 楽になる
♪
愛しい 人を 殺めた 贖いの 雨が降る
止まない雨を 集めた 滾つ瀬に 身を委(まか)す
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